toggle
2020-04-24

コロナ禍で東京の不動産価格はどうなるのか?価格に影響を与える要素から考えてみる


たじつ
たじつ

こんにちは。不動産の顧問業をしております、宅建士の田実です。

まだまだ見えないコロナの収束ですが、私は職業上、不動産価格へ影響を及ぼすニュースのチェックに余念がありません。当初の”GW明けの緊急事態解除”は厳しくなってきましたね・・・。

さて、コロナ禍で「不動産大暴落!」「マンション大暴落の底なし沼」などのニュースを見かけるようになりました。冷静に見ていると、不安を煽るような記事が多いなぁという印象を受けます。

不動産価格は確実に下がります。おそらく、東京の”住宅用不動産”は概ね15%〜20%ほど下がるのではないかと思います。しかし、大暴落とは言いすぎでしょうし、底なし沼!なんていうのはもってのほかです。

私は18年間、不動産・建設業界におりますが、この18年の間に数度ミニバブルと言われる高騰トレンドを、またその逆も現場の人間として経験してきました。

一つは2008年頃をピークにした不動産ファンドバブル、そして同年のリーマンショックによる崩壊。次にアベノミクス・黒田バズーカ+オリンピック景気によるミニバブル、そして「コロナ禍」です。

これらの経験から不動産の価格の決まり方をなんとなくではありますが、体得しておりまして、今回の「コロナ禍」でどこまで影響するのか深堀りしたいと思います。前置き長かったですね・・・。

住宅不動産に影響を与える①景気 ②住宅ローン金利 ③物件供給

不動産とくに住宅用不動産の価格に影響を及ぼす要素は、①景気 ②住宅ローン金利 ③物件供給 です。

多いっきり大雑把な表現をすれば「景気ムードと不動産相場は連動し、住宅ローン金利が更に価格上昇を後押しし、その地域の供給状況によって決定する」というプロセスです。

①景気のムードで価格は上がる

まずなんと言っても、住宅の価格相場は”景気ムード”で上下します。これは間違いないです。投資用の不動産と異なり、住宅は生活の器です。そして、大多数の方が人生で一番高い買い物です。

景気が良い(=先行きが明るい)ときは、消費意欲が高まりますよね。反対に、先行きが不透明なときに、大きな借金をしようとはマインド的に思えません。本当にこの気持ち次第で価格は上下します。

日本特有かもしれませんが(ちなみに私は日本でしか不動産業の経験がありません)、日本人の「住宅購入のきっかけ」は、家賃とローンとを比較してどっちが安いかというきっかけから購入検討を始めます。

毎月のキャッシュフローをポイントに、購入の是非を決めます(当然、固定資産税や管理費・修繕積立金も考慮しますが、つまりは月々の負担です )。

では、今回のコロナ禍はどうでしょう? 収束の見込みはまだ見えませんが、必ず終わりがあることです。今のところコロナ収束は秋ぐらいまでで、経済への影響は1年くらいという見立てが多いでしょうか。

いずれにしても、必ず終わりがきます。リーマンショックと異なるのは、経済が崩壊したわけではなく、一時的にストップしているという言い方が適当ではでしょうか。

東京の不動産相場は、停滞感からしばらく下がることは確実ですが、東京の不動産価値自体が減少したわけではありません。それに、収束の暁には、オリンピック開催というお祭りも控えています(開催は確定的ではありませんが・・・)。

最後に付け加えるとすれば、日経平均と住宅価格は相関関係があり、ほぼ連動しています。日経平均はある程度、理論値に基づいた価格でしょうけど、機関投資家が価格を左右しているという意味では、上がるか下がるかというまさに景気トレンド(景気ムード)の結果だと言えます。

②住宅ローンの金利が購入需要を支える

次に、決定を与える要因は「住宅ローン金利」です。アベノミクス・黒田バズーカにより、超低金利・マネー大量供給の流れが、2012年年末の第二次安倍政権が発足以降、少し前まで続いていました。

1990年代のバブル期よりも、不動産の融資貸し出し残高を超えた時点で引き締めに入りましたが、影響を受けたのは、投資用不動産いわゆるアパートローンの部類です。

話が前後しましたが、景況感の中住宅ローンの金利が安ければ、買わないという方が不自然なことでしょう。なぜなら、住宅を購入したほうが毎月の負担は安く、かつ部屋の面積は広くなるわけですから。

今朝の日経で、日銀が「長短金利操作(=10年物国債利回りを0%程度に誘導すること)」と国債購入の今年の買い入れ額80兆円について「制限なく」買える方針へと発表されました。金利が上がらなければ、住宅を買うことの環境要因としては影響を与えません。

国債購入制限なく、日銀議論へ CP・社債購入倍増

要するに、収束が見えないうちは価格は下落しますが、収束の見込みが見えてこれば、住宅購入マインドの回復は早いだろう、というのが私の見解です。収束後は、止まっていたものが動き始めるだけで、今は動く準備はできている状態だと思いますので。だから、「大暴落の底なし沼」では決してありません。

③住宅供給

次に住宅供給についてですが、資産を持っている人は、売らなければならない事情がある場合を除いて、先行き不透明のときには売却を控えるのが普通です。

したがって、今売出し中の在庫は相当に(15%前後)下がりますが、しばらく売るのを待てばよいわけですから、大暴落にはつながりません。

住宅用不動産は、投資ではありませんから、売らずに住んでおけばいいことです。それに、政府もしくは特定の県単位で「家賃免除」や「ローン支払い猶予」などの救済措置が徐々に出始めました。

いくばくかはそれでも間に合わずに投げ売りされる不動産はあると思いますが、東京都は財源も豊富なようですし、「大暴落する」レベルになる前に、なにかしらの策が出るのは見えてきています。

さいごに

最後に、売値と成約値の乖離率について触れます。住宅の売買市場は、おしなべて売値から6%下がって成約するという統計があります。

肌感覚でも実に的を射ている感覚ですが、概ね相場より1割を超えると極端に反響は減り成約まで時間がかかります(下げないと決まりません)。2012年と比較して、東京の住宅相場は1.7倍になりました。

今売りに出している方々は、値下げしようと動きます。仲介会社も値下げを勧めます。この時点で、今の相場感から概ね1割くらいは「売値」が下がると予想します。さらに、その表示値からはやはり5〜6%ほど下げて成約することを考えれば、全体的には15%程度の値下げは今見えている下落値であります。

収束までの見立てが半年程度であれば、その間の売却相場の減少は大きくても20%程度だろうというのが私の見立てです。

「大暴落・底なし沼」というのは、根拠のないものです。

と言いつつ、これまで根拠に欠けた説明でしたが、現場を経験している端くれの一応18年間の経験からみた「肌感覚」はこういうことでございます。


弊社は、企業様の社外不動産部として、守り面をサポートする不動産顧問業務の委託を受けております。クライアント様が本業に専念できるよう、物件管理マネジメントを弊社が代行いたします。本業の事業利益拡大化を、パートナーとして全力でサポートさせていただきます。



関連記事