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2020-04-30

【賃貸物件の仲介手数料と広告料】現場の率直な意見・思うこと


たじつ
たじつ

こんにちは。不動産の顧問業をしております、宅建士の田実です。

”仲介手数料”についてお話しします。まず、手数料について簡単に説明しておきますと、仲介手数料とは、賃貸物件を借りるとき、あるいは不動産を購入・売却するときに発生する「報酬」のことです。

依頼主が依頼した不動産業者に支払うもので、賃貸物件を借りる方であれば物件案内してくれた(最近では内見に立ち会わないケースもありますが)業者に支払うものです。

仲介手数料の額については、宅建業法で定められており、その規定を超えて報酬を受け取ることは「業法違反」となります。なお、賃貸取引の仲介手数料の規定とは、賃料の1ヶ月分が上限でありこれを超えることはできません。

なお、物件が居住用の物件に関しては、貸主・借主ともに0.5ヶ月分が上限であり「依頼者の承諾がある場合」に限り、一方から0.5ヶ月超1ヶ月分以内を受け取ることができる法律になっています。

賃貸借の仲介(媒介または代理)で受け取ることができる報酬額

物件種別貸主借主
居住用賃料の0.5ヶ月分以内 ※1賃料の0.5ヶ月分以内 ※1
その他の物件賃料の1ヶ月分以内賃料の1ヶ月分以内

※ 物件種別に関係なく、取引で発生する報酬は賃料の1ヶ月を超えてはいけない(業者が複数介在したとしても1ヶ月が上限) ※1 依頼者の承諾があれば0.5ヶ月を超えて1ヶ月以内の範囲で受け取れる。

前置きが長くなりましたが、仲介取引では、取引全体で業者が受け取る仲介手数料は1ヶ月分を超えることができませんが、実務では2ヶ月分発生させているのが現状です。※東京都内の話ですので、他の地域の場合は異なる場合がありますことご承知置きください。

建前上は、あくまで「仲介手数料」としては1ヶ月分であり、もう1ヶ月分は「広告料」とか「情報管理料」とか様々な名目(以下「広告料」で統一)となっています。具体的には、”仲介手数料”を物件を借りたい方が負担し、”広告料”はオーナーが負担しています。

要するに、仲介手数料という名目でなければ受け取っていいだろうという考えのもと「広告料」という報酬でやり取りしているのが賃貸現場の実際です。

では、「広告料」とは違法なのか? 広告料とは業者の不当な請求なのか? という点ですが、違法かそうでないかという点は、ここでは議論の意味があまりないので明らかにはしませんが、広告料がなければならない事情もあったはずです。

不動産賃貸物件が流通には、現状、貸主・物元業者・客付け業者・借主の4者が関わって取引成立する状況にあります。

「物元業者」とは貸主が依頼する不動産業者であり”管理会社”ともいいます。「客付け業者」とは、賃貸希望者へマッチする物件をコーディネートして案内する業務を主に行う業者のことをいいます。

東京に限らず、そして賃貸物件に限らないことですが、今はすでに住宅ストックは充足しており都内であっても、概ねどの行政区も空室率は10%〜15%を超えています。

昔のように、空室を放っておいて「勝手に」決まっていた時期とは異なり、入居者を「掴んで」決めなければならない状況に変わっています。そして、不動産を探す方法も、インターネットが主流というかインターネットが9割以上という現状と言ってもいいでしょう。

空室を決めるためには、インターネット(suumoなどの情報サイト)への掲載をして、入居希望者へ告知することは、物元業者としてもっとも基本的な募集業務のひとつとなっています。

業者の立場からしたら、インターネットに掲載もしないで、どうやって入居を埋める気があるのか? と言えるほどに基本的な施策です。宅建業法は昭和27年に制定されてから、住宅を取り巻く環境はめまぐるしく変化しています。

戦後の住宅復興・都市化・家不足を経て、今では家余りの時代へと変化してしまいました。昔の物元業者は、空き部屋のチラシを店頭に貼り付けておけばよかったですが、ネットに掲載することが当たり前になり、掲載費用という新たな広告宣伝費がかかるようになりました。

定かではありませんが「広告料」が常態化し始めたのは、ネットが普及し始めたおよそ20年前からです。

物元業者は、空室が賃貸希望者に届くようにとネットに掲載しますが、これだけでは決まらない現状もあります。家は最終的には、中を見ないと決められない方がほとんどであり、部屋の内見には”不動産業者の立ち会い”が必須となります。

要するに人を介して決定するものでありますからら、その”人=営業パーソン”に、空室物件を「優先的に」紹介してもらうような働きかけが”入居付け”には有効であることが言えます。

働きかけでもっともダイレクトに効果があるのは、入居を決めてくれた業者へのインセンティブであり、これも「広告料」と呼ばれています。つまり、物元業者から客付け業者へ「成約してくれたら報酬を出します」という物件は、報酬が出ない物件よりも優先理由になります。

少し脱線しますが、なんだ仲介業者は賃貸希望者の希望する物件を案内するものであって、報酬の多い物件を優先するとはどういうことだ! という声が聞こえてきそうですが、そこまで不動産業者はお人好しではない、というのが現状です。

報酬が多いものを優先するのは不動産業者に限ったことではなく、保険の代理店でも、ファイナンシャルプランナーでもそうであるかと思うので、特別不動産業者が攻められる対象になるのはおかしな話であります。

脱線しましたが、とにかく物元業者として”空室を埋める”には、タダで決めることはできず、ネット広告や業者へのインセンティブなしには「決められない現状」であることが、広告料が発生した背景と言えます。

事実、当社でも依頼者(オーナー)様に十分な説明の上で、成約した際に報酬を受け取っております。もしも、このことについて違法だとの異論を唱える業者がいたとしたら、”正論”を武器に自らを棚上げしているに過ぎないことだと思っています。

違法であるか?という以前に、昭和27年に制定された宅建業法が、現在の市場にマッチしているのか? という議論も同時にされないフェアーではないと、物元業者の端くれとして働く身分としては感じます。

しかし、不動産業者すべてがまともであるかという議論は別であり「情報の非対称性」を武器に、訳のわからない名目で手数料を請求してくるところもありますから、消費者は注意しておかなければばらないという事情は現実にございます。


弊社は、プロパティ・マネジメントに徹した管理会社です。協力(仲介)業者とのパートナーシップ構築、入居者からのクレーム対応迅速化により、高稼働・解約防止のためのマネジメントを行います。



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