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2020-05-21

敷金・保証金・敷引・償却? 賃貸借契約時の預け金について


たじつ
たじつ

こんにちは。不動産の顧問業をしております、宅建士の田実です。

敷金なのか保証金なのか? 敷引なのか償却なのか? 様々な呼び方はあるのですが、基本的な趣旨は”預け金”と”権利金”に分けられます。敷金・保証金は預け金で、敷引や償却は権利金の一種と捉えておけば問題ありません。

では、ひとつずつ見ていきましょう!

1)敷金

敷金とは、賃貸借契約の金銭債務を担保するものとして、借主から貸主に預け入れる金銭のことを言います。

具体的には、借主が賃料を払えず滞納が生じた時などに、貸主は敷金を充当して弁済を受けるという風に、借主が支払わなければならない金銭を履行されない場合に敷金から返済をうけることができるものです。

つまりなにか起こったときのための保険金という意味合いのものです。敷金は住宅の場合は1〜2ヶ月が相場(関西圏以外の場合)でありますが、店舗や事務所の場合は6ヶ月〜12ヶ月分などと高額になります。

敷金を受け取るもう一つの側面としては、”財力の証明”のような面があります。事業とは不安定なものでありますから、貸主にとって住宅と異なり家賃を受け取れるリスクが高まるものです。

賃貸借契約を開始する時というのは、相手方の信用がない状態から始まります。しっかり家賃を払ってもらえるかどうか分からない訳ですから、十分な敷金を設けることで、それだけの財力があるという証明を示すための敷金設定という側面があります。

2)保証金

事業用(店舗・事務所・倉庫など)の賃貸借契約の場合に”保証金”という名目で預け金を取る場合があります。

基本的には呼び方が異なるだけで、敷金と契約上の目的は変わりません。

3)敷引

敷引とは、預け入れた敷金のうち一定額を契約満了時に差し引くことを言います。例えば、敷金3ヶ月・敷引1ヶ月であれば、契約が解約となったときには、3ヶ月分のうち1ヶ月分は貸主のまま(収入)で、残りの2ヶ月分のみを返還するというやりとりになります。

では、敷引はなんのための費用か? という疑問が湧いてきますが、礼金の一種もしくは退去後の修繕費に企てる金銭という意味合いが近いものです。

つまり具体的に敷引はなにに使われるものか? とはっきりしているものではなく、契約条件のうちの一つとして設定されているものです。

契約前から「敷引1ヶ月となりますが、了承の上お借りください。敷引の1ヶ月は当方で受け取らせていただきます」という不動産取引の特殊な条件設定だ、ということになります。特に関西地区に多いこの”敷引”制度ですが、関東地区ではあまりみかけない慣習です。

[補足] 敷引とは、住宅の賃貸借契約でよく使われる条件であり、似たようなもので保証金の償却がありますが、事業用物件の賃貸借契約では関東地区に限らず”償却”はよくある契約条件のひとつです。詳細は次項にて

4)償却

敷金の敷引にあたるものが、保証金の償却です。したがって、敷引と同じように解約時に借主に返還しない一部の金銭のことを”償却”と呼びます。

繰り返しになりますが、事業用物件(店舗など)の賃貸借契約では、保証金-償却設定のある契約条件が一般的です。

なお、保証金の消費税の課税の扱いについては、混同しがちですが、あくまで預け金の性質しかもたない保証金の場合は、消費税は非課税となり、償却設定のある保証金の場合は、償却に対しても保証金に対しても課税対象となります。

賃料が50万円(税別)の事務所の賃貸借契約で、保証金が6ヶ月設定の場合、償却がある場合の保証金は3,300,000円であり、ない場合は3,000,000円となります。

まとめ

いろいろな呼び方はありますが、敷金と保証金は同じもの、敷引と償却は同じもので地域によって呼び方がことなるものと思っておけばいいでしょう。

”関西だから敷引がかかる”という絶対的なものではなく、商習慣のひとつであり、物件によってまちまちであるということを覚えておきましょう。

不動産取引は、土地と切り離せない対象物を扱うため、その地域の商習慣(ローカルルール)が根強く引き継がれる取引であります。


弊社は、不動産意思決定のための顧問業務を承っております。企業様におきましては、社外不動産部として機能し、本業に集中していただくことが可能になります。個人様におきましては、慣れない不動産取引のアドバイザーとして不動産取引を成功に導くお手伝いをさせていただいております。



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