お持ちの物件を売却検討する場合、今すぐ売らないという選択肢も当然あるはずです。売却せずに賃貸して家賃収入を得るということも不動産運用のひとつの方法です。
売却と賃貸の判断をする基準について掘り下げていくのが今回の目的です。
結論としては、ローンがない場合の例では、27年以降で賃貸が売却益を上回り、5年前に購入した物件でローンがある場合だと、分岐点は72年という結果でした。
詳細は以下の通りです。
まず、前回のメールでも触れましたが2012年以降の東京の不動産価格は大きく上昇しました。一方、売買相場の上昇に対して、家賃相場も上昇しましたが、売買相場と比例するほどには上がらないのが日本の住宅賃貸市場の特徴です。
今の世田谷の賃料と売買相場は、概ね利回りに換算して3.5%〜4.0%程度となっています(賃料が月額25万円の物件の売買価格換算は7,500万円〜8,570万)。
仮に3.7%として(約8100万円)、税金や経費を考慮しないシュミレーションでは、売却額が賃貸収入を超えてくるのは27年以降となります。仮に諸経費率10%、所得税20%として、経費を加味すれば、35年以降でやっと売却金額を超える計算になってきます。
一時賃貸に出して、将来のお子様用にと残しておく選択などもいいですが、利益優先の前提では賃貸は先の長いに話しになってきます。
また、多くの方は住宅ローンを組んでおり、ローンの返済まで考慮すれば、もっと期間がかかることになります。
仮に、5年前に購入したマンションで例にしてみましょう。
2018年に6,600万円で購入したマンションは、6年後の現在は8,500万円まで価格上昇しています。
※国土交通省から発表される統計情報をもとにしています。
※2024年現在
まず賃貸した場合ですが、
期間35年、金利0.5%、借入れ価格6,600万円でローンを組んだ場合の毎月返済額は17.2万円。
管理費・修繕積立金が月額3万円、固定資産税が年額12万円、月額25万円で賃貸した場合の年間の税引前手残り額は45.6万円で、税率20%として約36万円(実際には減価償却があるので、もう少し手残りは多くなります)。
では、売却する場合は、
2023年11月時点でのローン残債は5,580万円で、8,500万円で売却できたとします。
差し引くものとして、まず譲渡益は約1,900万円ですが、居住用財産の3,000万円控除が利用できますので譲渡所得税はゼロ。
売却するのに仲介手数料が約288万円かかり、ローン残5580万円を一括返済した残りは、約2600万円です。
賃貸に出して毎年約36万円、売却したら2600万円となり、賃貸の利益が売却益を超えるには72年かかることになりました。
この結果をどう捉えるべきでしょうか。
まだ今後売買相場が上昇すると考えれば、今は賃貸に出して天井と思うタイミングで売却することも選択肢としてはありでしょう。
ただし、賃貸運用をすれば、住宅用家屋ではなくなってしまうので、3,000万円控除が利用できなくなるのでそれも考慮して決断する必要があります。
また、賃貸で入られた方がいつ出るかはわからず、売りたいときに空室になっているとは限りません。賃貸中のままで売却すれば、相場より安く売らなくてはなりません。
賃貸売買比較は、以上の結果になりました。参考になれば嬉しく思います。
最初に注意点として、、、あくまで個人的な見解に触れるもので、将来を予測するものではありませんので、ご了承のほどお願いいたします。
まずは、不動産相場がどれくらい上昇したのか。城南地区(世田谷・品川・目黒・大田区)に焦点をあててみると、2012年が底で、それ移行今日まで上がり続け、2012年比で8.1割上昇していることがわかります。(出典:レインズ「月例速報 Market Watch」より)
このデータは、中古マンションの成約坪単価(成約価格÷専有面積)をもとにしています。
2012年12月に第二次安倍政権が発足しました。株高とオリンピックムードに押されてみるみると上がっていき、オリパラがてっぺんではないかという声もありましたが、勢いが劣ることはありませんでした。
統計では、この約11年で伸び率が一番大きかったのが、2020年から2021年にかけての上昇率12.2%です。コロナをきっかけに進んだテレワークの影響、コロナによって住まいについて考えるきっかけが増え、生活シフトとともに取引が盛んになり、様子見の2020年からウィズコロナ期を経て、大きく反動がきたイメージでした。
では、今後はどうなるのか?
まず新築マンション市場は、建築費の高騰が落ち着きを見せませんし、供給在庫が少ないこともあり、相場が下がる気配があまりしません。
では中古マンション市場はどうでしょうか。取引量では2022年の1〜10月までが2,987件、今年の10月までで2,895件の成約がされており、取引が減少しているとは言えません(レインズに登録された成約件数)。
坪単価も昨年対比で6.4%増加しています。(2023年11月現在)
不動産(マンション・住宅)相場に影響を与える大きな要因としては、金利動向が一番ではないでしょうか。
アメリカとの金利差の現状を考えれば、このままでいいとは言えず、金利差を埋める方向は誰もが認めることでしょう。
今後、賃上げがもっと高い段階で実現していけば、マイナス金利解除・金利上昇フェーズ、、となってくるのだと思いますが、政府・企業が頑張ってその方向に向かってもいつ実現できるかは正直わかりません。。
日銀による長期金利の上限引き上げがされたことで、固定の住宅ローン金利は上昇しましたが、変動金利には及びません。
円安状態もグローバルな東京で不動産を考えたときには、上昇圧力のひとつでしょう。世界の大都市から比べるとまだまだ東京は安いと言われています。
そして、世田谷区は、住宅地として確立された評価があります。
世田谷のマンション市場においては、未だ弱まる見立てがありませんが、どこまで続くのかは私自身もそれはわからないことです。皆様の参考になれば嬉しく思います。
しかしながら一方で、流通在庫の販売期間長期化や価格改定数の増加など、上昇局面から一服する動きも出始めています。
(2023年11月作成の記事です)
本日もお読みいただきありがとうございました。
ニュースを見ていて、「AI」を聞かない日はないくらい日常になってきました。
AIは不動産業界にもやはり大きな影響を与えていて、業務効率化で役立っている面も大いにあります。
また、それと同時に不動産業界でもスピードが求められるシチュエーションが多くなっていることを感じます。
例えば、一括査定サービスです。今やスピード対応が必勝であるという観点から、査定依頼を受けた数分後には何十枚という査定書を遅れる体制が不動産会社側には整っています。
皆様も査定依頼をしたときに、実感されているかもしれません。
種明かしをしてしまうと、不動産業者向けに作られたAI査定サービスがいくつかありまして、中には45秒で査定ができる!と謳っているものもあり、売りはとにかく”早く分厚い”査定書が作れる、ということになっています。
物件を売却したい方からすると、査定結果が早くわかることは悪いことではないと思いますが、それより物件の良さをしっかり検証してもらって、高く売ってもらえることこそがゴールだと思うのです。
査定書の骨格としては、取引事例を比較して◯◯マンションがいくらで売れたから、査定対象物件は◯◯◯万円ですというロジックがベースになっています。
その意味では、どの査定書でも同じことを行っているわけですが、同じマンションの階数違いはいくら差をつけるのか?
査定対象物件より1年早く分譲された近隣マンションが売れた事例と査定対象物件とを比べていくらのをつけるのか?
住宅地では駅徒歩1分と3分の差はあまりありませんが、商業地の駅徒歩1分と3分は大きく違う、など。
近年のAI査定では、このような物件ごとの個別差を検証させることは難しく、単眼的な査定結果にどうしてもなってしまいます。
とにかく高く出してくれた会社がいい、とお考えになるかもしれませんが、AI査定では、高い事例を選択して査定すれば、高値の査定結果をいとも簡単に導き出すことができてしまいます。
高い査定額も大切ですが、大切な物件をどこまで深掘りして評価してくれているか、といった視点で査定書を見てみると、その現実性が見えてくるのではないかと思います。
前回までに、買い替えの場合には、買い先行型のメリットをお伝えさせていただきましたが、反対にデメリットのひとつとしては、売却できるまでローンを二重に支払わなければならないことが挙げられます。
買い先行で進めなくとも、同時に見つかることがベストなので、その場合に生じる引渡し時の問題「引渡猶予」についてご紹介させていただきます。
一般的な、自宅売却と買い替え先購入の同時並行の流れは、
売却の目処が立ってきた→買い替え物件の購入契約→自宅の売却契約→自宅の引渡し(残金受け取り)→自宅住宅ローンの全額返済→買い替え物件の残代金支払い・引渡し
となるのですが、自宅を買っていただく方からすると、残代金を支払ったのだから、その日から鍵をもらって早めに引っ越しを済ませたいと思うはずです。
しかし、買い替えの売主様の場合は、売却の残代金を受け取って、ローンを返済してからでないと、次の購入先のローンが実行できません。
ということで、こういう場合は、売却物件の引き渡し時期に猶予期間を設けてもらうことで買い替えを実現する流れになります。
具体的には、自宅の売買代金を受け取った日から、買い替え先の残代金を支払って引っ越すまでの期間(例えば7日間)は、買主様に所有権は移したものの、もとの家に住まわせてもらう、という条件にして進めることなります。
これを”引渡猶予”と言いまして、買い替えの売主様の事情に合わせた特約を設けることで解消することになります。
売却と購入が同時並行でできれば、二重ローンの心配はないですね。
本日は、買い替えで成功するパターンを2つご紹介させていただきます。
1 「購入が先、売却が後」の順で進める
以前のメルマガでも触れましたが、売却を失敗にしてしまうパターンのひとつは、売り急いでしまうことです。
買い替えで、購入と売却を同時に進めると少なからずどちらかかを妥協することが多く、成功に導くことがなかなか難しくなります。
まずは住みたいと思える物件をじっくりと探して理想の家を見つけることです。
2012年前後以降は相場が上昇し続けていますので、ほとんどの方は現状の住まいよりもいい物件に住み替えることが可能です。
今の相場が続いている限りは、買い替えによって今よりステップアップできるのが一般的です。
2 「賃貸に引っ越してから売却開始」
売り相場は、反対には”購入するのは高い”ということであります。
上述のように、相場上昇期の買い替えは損はすることは少ないですが、安く買うことができません。
ですので、一時的に賃貸に住むというのも選択肢です。
ただ住宅を日々扱う者ですが、将来の相場を当てることは正直なところできません。。今高くても今後下がるとかどうかはわからないものです。
今後緩やかに金利は上がっていくのだと思いますが、不動産相場がそれを理由に減少トレンドになる相関関係は絶対ではありません。
世田谷区は今後も人気エリアであり続けますので、なおさらそう言えます。
なので、極論としては気に入った物件があれば、多少高くても購入すればよいと思います。
物件の売却は、すこしでも高く売る機会にしていただきたいと思いますが、購入物件は、損得ばかりに気を取られることなく、住みたいと思える物件を手に入れていただくのがよいと思います。
成功する買い替えのモデル2パターンというタイトルでしたが、共通点としては、急いで売らないこと。そのためには、まず購入もしくは賃貸で引っ越す先を決めてから売却を開始する。
ということになります。
売主様の置かれる状況に応じて、ベストアンサーは異なって参ります。もしもお悩みの場合はお気軽にご相談ください。
前回は買い替えの難しさについて触れましたが、買い替えやその他事情によっては不動産業者の「買い取り」で進めなければならない場合も少なからずあるかと思います。
そこで今回は、買い取りのメリット・デメリットについてお話します。
まずデメリットについてですが、それはすなわち価格が安くなってしまうことです。反対に安くなる以外のデメリットはあまりありません。
メリットについては、第一に「売却スケジュールが立つ」点です。
買ってもらえる方を探すステップがなくなりますので、いつ契約していつまでに残金が入るかが明確にできます。
次に「契約条件にローン特約がつかない」点です。
一般の方に売却する場合は、売買契約後に申請する住宅ローンの本審査がもしも承認されなかった場合に、買主保護のために白紙解約できる停止条件をつけることになります。(※本審査は売買契約締結後にしか行うことができないため)
つまりネガティブケースとしては、契約後に白紙になる恐れがあるということで、契約の確実性が担保されないことになります。
反対に業者買取であれば、”ローン特約をつけない”契約が通常ですので、残金を受け取れる時期が確実になります。
3つめは、「売却し終わってからの責任がない」点です。
一般の方に売却する場合は、引渡後3ヶ月は、売買完了前に判明していない不具合であっても売主が責任を負うことになりますが、業者買い取りの場合はこの責任を免責にする契約が商習慣となっています。
なお、この責任のことを”契約不適合責任”といいます。
4つめは、「近所に知られずに売却できる」点です。
売却活動は水面下で行いますので、引渡完了するまで近隣に知られずに売却することができます。
通常の売却方法であれば、ネットに掲載したり、チラシを撒くので、近隣の人に知られずに売却することは難しいですが、業者買取はこっそりと完結させることが可能です。
不動産の売却は、まずは高値売却を第一義とするのが望ましいですが、事情によっては”業者買取り”を選択することも一手段となります。