仲介業者の役割とは?必要なのか?
中抜きはどの業界でも避けられないことです。2015年11月、ソニー不動産がYahoo!と手を組んで、売主直接の売却サービスを始めるなど、”中抜き” に近い動きが出始めました。仲介業の存在意義にかかわる動きですので、深堀りしたいと思います。
こちらのサイトHOME’S PRESS『それでも不動産仲介会社は ”必要” と言える』にあるように、ユーザーが仲介業者に対して物件を探してもらうことにしか価値を感じないとしたら、それは ”不要” としか言いようがありません。
「売主さんが直接ネットに不動産の情報をあげられるようになったら、買主である私はそれに直接アクセスすればいいですよね。そう考えると不動産仲介会社さんって本当に必要なのでしょうか?」
コンサルティング中にある消費者の方からこのような質問を頂いた。
お話をよく聞いてみると、どうも「不動産仲介会社」=「不動産情報の紹介」という認識らしく、不動産情報さえあればあとはいらないと考えている様子。
わたしの考える仲介業者の存在価値とは ”取引の安全確保を図ること” と ”依頼主の要望を叶える選択を示せるか” です。
さらに、こうも言っています。
不動産仲介会社の役割とは、不動産という商品の本質や商品価値を分かり易く、勘違いさせずに売主と買主に伝えることだと思う。言い換えれば、取引後に「えっーこんなはずではなかったのに…」とならないように、不動産における「目に見えないもの」「見ても分からないもの」「気付かないもの」を把握して伝えることだ。何故なら、この3つが当事者たちに不測の不利益を被らせる可能性があるからだ。
先日新築戸建を買っていただいたお客様の事例ですが、わたしが ”取引の安全化” のために折衝したことは、手付金を預かることと瑕疵保険の付保証明手続きを早めたことです。
今回のお取引で、わたしが一番心配したことは、引き渡しまでに売主(一戸建ての販売業者)が倒産してしまわないかです。
仕入れて売るを繰り返す開発系の不動産会社は自転車操業ですから、いつ潰れてもおかしくない。デベロッパー専業で歴史がある不動産会社で一度も倒産していないのは、唯一明和地所のみです。たったの1社。。
ライオンズマンションで有名な大京も、比較的社員さんは優秀な方が多かったサーパスシリーズの穴吹工務店も潰れて(※会社更生法または民事再生法適用)います。
今回のお取引では、とにかく契約と決済を急かされたことに端を発し、その他諸々の不安が重なりました。売主は倒産寸前か?という不安を受け、”取引の安全確保策” を講じる必要を感じたわけです。
手付金を払ってから売主が倒産してしまっては手付金は帰ってきません。手付金を流してしまうリスクを回避するため、手付金を弊社が預かるという条件にして進めていましたが、いざ契約日前日となり、謄本を取得してみたら ”登記申請中” という状況、、これは最悪のことを考えれば ”差し押さえ中” です。売主が手形の不渡りを出してしまったことを意味します。
さすがに凍りました。売主から登記申請中であることを聞いていれば別ですが、何も連絡はありませんでした。実際には別棟が売れたために抵当権抹消登記がされていたわけですが。
売主(販売会社)に尋ねると「別棟が売れた」と言いますが、既に発言に信用がありませんので、とりあえず翌日の契約は延期することにしました。
最近は仕入れ値が高騰していることや売れ行きが悪くなってるという話を聞いてましたし、デベロッパー(≒建売業者)が潰れたという噂もチラホラ聞いてましたので余計に不安。
大先輩に相談して ”契約決済同時” ※手付金が帰ってこないリスクを回避できます をアドバイスいただきますが、融資銀行の手続き上この方法が取れず。仕方ないので、最悪手付金をドブに捨ててしまう場合もあります、と買主さんに覚悟してもらって、手付金を100万から50万に下げてもらうことを売主に交渉し、進めることにしました。
これに加えて、瑕疵保険の付保証明を引き渡し後、10日以内に買主へ渡すことを条件にしました。売主からは「瑕疵保険の付保証明は3ヶ月以内に提出する」これを書面で同意してもらう、という条件提示がありましたが、受け入れがたいので折衝したわけです。
瑕疵保険とは、万が一売主が倒産した場合でも、瑕疵担保責任の範囲内のことは保険金が支払われるという主旨のもので、業者に義務付けられているものです。ただしこれは、売主が手続きを怠らなかった場合のことであり、義務化されてるとはいえ、引き渡し後に売主が手続きを完了し、付保証明が買主の手元にこない限り有効になりません。
これを3ヶ月後に渡すと言われては、その間に倒産したら瑕疵保険の意味がないことになってしまいます。ただでさえ、今倒産する心配をして進めてきたわけですから、3ヶ月なんて待てるはずがありません。これを断り10日以内としました。これで引き渡し後に売主が倒産してしまってから、大きな欠陥(構造耐力にかかわることと雨漏り)が発覚したとしても、保険がかかっていますから最悪の事態は回避できます。
このようなに仲介業者は取引の安全確保を図るために時には相手方と戦わなければならないことがあります。決して物件情報を探して紹介だけしているわけではないのです。今回のお取引のように、気付かないことを見つけて防止策を折衝することが仲介業者としての存在価値かと思います。
その意味では、ユーザー同士(売主・買主同士)の直接取引には限界があり、精通した業者の役割に価値があると思っています。なので、中抜きの動きは前々からありましたが、十分に価値があると思うわけです。
蛇足ですが、この売主業者とは結構やりあったので、最後までピリピリな関係が続いて精神的によくなかったです。。