賃貸募集で一般媒介にすれば、募集間口は広がり空室対策になるのか?
よく一般媒介にすれば、募集の間口が広がって、早くに空室が決まるという考えを聞きますが、果たして本当にそうなのでしょうか。
専任媒介のように、1社独占ではないので、情報の囲い込み状態になることは防げます。
[参考記事:情報の囲い込みについて] 空室が”囲い込み”状態になっていないか注意しましょう。
しかし、業者の間口を広げた結果、入居希望者の元に物件情報として届いてなければ意味がありません。つまり、一般媒介で複数業者に募集を頼んだことで、入居希望者へのリーチが増えた、のであれば正解でしょう。
目次
一般媒介ではポータルサイトでどのように掲載されるか?
ネットでの掲載で果たして間口が増えたでしょうか、調べてみましょう。下記の画像は、ポータルサイト(掲載物件数No.1)suumoの掲載ページです。
こちらはどうやら2社に一般媒介をしているようですが、おわかりでしょうか?マンションの建物画像の下に2列で空室の情報が掲載されています。実はこれは同じ部屋の情報が2つ並んでいるだけです。これを名寄せ表示といいます。
一昔前までは、同じ物件であっても、5社が掲載していれば、それぞれ別々で表示されたため、サイトユーザーが目にする機会は多かったといえばそうです(掲載数が多いと逆に安売りされている物件に見えるということもありましたが、、、)。
しかし、今は各ポータルサイト上では、サイトユーザーの検索性を高めるために、同じ物件の場合は、ひとつの場所に集約されてしまうようになりました。これを名寄せ表示といいます。
今は、ネットである程度目星をつけて、問い合わせする方がほとんどですので、ネット戦略は超重要ですが、このように複数社に依頼したからといって、ポータルサイトの上で他物件と差別化することは不可能になっています。
繰り返しますが、同じ物件が複数社から掲載される状態は、サイトユーザーにとって公平に効率よく探すのに寄与しない、逆に悪い影響だサイト運営側は判断しているわけです。
しかも、この例では募集条件が異なってしまっています。。管理費が1社は15,000円であるのに、もう1社は16,000円となっています。さて、どちらが正しいのでしょうか?このように、募集条件が業者間で間違って掲載されていることも、一般媒介物件の”あるある”ですね。
[まとめ]専任で1社に頼む場合と、一般媒介で複数社に募集を依頼することの、ポータルサイト上の差はない(等しい)と言えます。
仲介店の営業マンは一般媒介(流通)物件を案内してくれるのか?
次に、仲介店の営業さんがお客様へ紹介する、日々の動きにクローズアップして考えていきましょう。
仲介店舗の繁忙日は、土日祝日です。賃貸希望者を連れて物件の内見をするのは、9割方土日に集中しています。そして、お客様と仲介店の最初の接点はネット問い合わせであることが大多数です。
昔と違って、まず駅前の不動産屋さんをアポ無しで尋ねる、といった探し方をする人はどんどんと減っています。まず、ネットで見つけた物件に問い合わせて、現地集合で内見する。
運良く気に入ってもらえたら、そのまま申し込みして、と契約手続きに進んでいきますが、「申込み」に至らなかった場合、営業さんは自社で抱える(自社募集物件の)他の条件の近しい物件にエスコートするか、なければ店舗へ一緒に戻って、他の会社がもっている物件(流通物件)を検索して、別の物件を案内するように考えます。
店舗にお客様と一緒に戻り、接客カウンターで物件検索します。検索条件の中から、候補の物件を探しますが、この時、案内候補の物件が一般物件であった場合、避けてしまうことがあります。なぜか?
まず、一般媒介の場合複数の業者がオーナーから直接預かっているので、最新の情報はオーナーさんしかわかりません。しかし、委託会社(物元)を飛ばすわけにもいかないですし、それにオーナーの連絡先もわかりません。
客付け業者から物元業者(一般媒介の物元業者)へ連絡を入れます。
客付け業者言葉「□□□」 物元業者言葉『△△△』
「〇〇マンション、まだ空いていますか?」
『先週までは空いてましたが、オーナーさんに確認してみないとわかりません』
「これから案内したいので、確認とっていただいてもいいですか?
『わかりました、ご連絡します』
・・・
『連絡しましたが、電話にでないのでわかりません』
こんなことはしょっちゅうです。業として大家さんをやっている方ばかりではないので、このように土日の電話にでない、ということがとても多いのです。
これでは、いい物件だとしても案内するわけにはいきません。なぜなら、もう既に決まってしまっているかもしれないからです。
また、連絡着いた場合でも他から申し込まれるということもあります。
客付け業者言葉「□□□」 物元業者言葉『△△△』
「〇〇マンション、まだ空いてますか?」
『確認とって連絡します」
・・・
『オーナーさん連絡取れました。まだ募集中です』
「ありがとうございます、案内してきます」
・・・
「物件案内してきました。お客様気に入ってもらえたので申込みしたいので手続方法教えてください」
『承知しました、再度念の為確認して連絡します』
・・・
『申し訳ないです、別で依頼している業者から申込が入ったようです』or『別で依頼している業者で昨日に内見した方の結論がさっきでて申込になったようです』
土日の営業にかけている歩合の仲介店の営業さんにとって、一度の案内は超重要です。しかし、一般媒介の物件はこのように時間を割いたのに、外的要因により案内の努力が水の泡になることが多数あります。
なので、客付け業者の営業さんは、一般媒介の他社募集物件の客付けを敬遠するきらいがあります。私がお客様を案内する場合も同じ理由からよほどいい物件で、案内前から申込みがないことがハッキリ確認できる場合だけです。
確たる情報がわからない、業者の案内通りに部屋にいったのに鍵がない、違う場所にあったなど、スムーズに仕事が進まないことが多いです。
このように、客付け業者からすると、一般媒介の流通物件(レインズに掲載されている業者間共有物件)を決めるのには、ハードルがあるということを理解しておきましょう。
とはいえ、決めてくれるのは物件周辺の特定の業者だから、その業者が決めてくれるから問題ない、という反論が聞こえてきそうです。本当にそうでしょうか?
物件近くの仲介店舗トップ6社合計でも、募集在庫全体の3割程度のシェアしかない
下記のグラフは、小田急線「経堂」駅と、東急目黒線「武蔵小山」駅の、2020年2月13日現在の単身向け賃貸物件の空き状況を示したグラフです。募集中物件のうち、募集部屋数が多いトップ6社とそれ以外を示しています。
経堂では、全体空室戸数194件に対して、トップ6社(募集戸数の多い上位6社)の合計は、全体の27.3%です。武蔵小山のそれは、37.1%となりました。
仮に、トップ6社に一般媒介で募集を任せたとしても、それ以外の空き物件が7割近くあります。業者が見込み客を案内する、優先順位は、①自社サブリース物件②自社委任(専任募集)物件③自社委任(一般媒介)物件④他社物件 となります。
前述のように、今の時代は、賃貸希望者はポータルサイトで気になる物件を一本釣りの状態で問い合わせします。業者には足を運ばずに、ネットで目的物件指名と!いう最短ルートです。
仮に、ポータルサイトから問い合わせたのが、トップ6社以外が募集している物件だったとしましょう。案内をします、決まりませんでした、その後店舗にもどって、もしくは近くのカフェで検索して、再度周辺の別物件を案内する場合、一般媒介(流通)物件を案内するでしょうか?先程も話したように、一般媒介(流通)物件はリスクがあるので案内物件候補から外します。
一般媒介で募集をしているオーナーが、トップ6社程度にお願いしていれば決まるという考えだとすると、この6社の見込み客にしか物件はリーチできないことになりませんか?
その駅周辺にはトップ6社以外が募集する物件が7割近くもあって、それらの物件は誰かが案内して、いずれ必ず在庫から消えていきます。7割の確率で流入してくる見込み客を、一般媒介だという理由で案内すてくれる候補物件から外れることになってしまうわけです。
大げさでなく、これが賃貸仲介の現場の実情(リアル)です。
実際に弊社の管理物件(弊社は、すべて自社専任募集物件)を成約してくれた業者さんは実に様々です。物件より都心部の業者(ターミナル業者)が、沿線を下ってきて決めてくれたケース、沿線より上り方向に上がって決めてくれたケース、同じ城南エリアだけど沿線が違う(例、物件は東急目黒線だけど、東急東横線)業者が決めてくれた、などと、実に豊富です。
物件の所在する駅にある業者が決めてくれることはありますが、全体の割合で言えば少数です。それだけ、特に都内近郊の業者は広範囲に営業していることがわかります。
まとめ
一般媒介で複数業者に依頼しても、ポータルサイトの表示結果に差別化できるだけの効果はなく、客付け業者からは一般物件は敬遠されてしまい、一般媒介で頼んだ業者経由でしか、賃貸希望者にはリーチできないために、間口が広がったと言えないことがおわかりいただけたのではないでしょうか?
弊社は、プロパティ・マネジメントに徹した管理会社です。協力(仲介)業者とのパートナーシップ構築、入居者からのクレーム対応迅速化により、高稼働・解約防止のためのマネジメントを行います。