話が通じない相手との交渉 どう振る舞うのが得策か?
こんにちは。不動産の顧問業をしております、宅建士の田実です。
仕事をしていると、困ったことに全く話が通じない人と出くわすことがあります。”正しさ”というのは、人によって異なるものなので、致し方ないことなのかもしれませんが、仕事ですので素通りするわけにもいきません。
これまでの私の経験上、”話が通じない人”との交渉の仕方について、対処法をまとめてみたいと思います。読んでいただいた方の交渉事解決の糸口になれば幸いです。
一旦、相手の要求をすべて聞く、とりあえず聞く
支離滅裂な相手には、本人が”支離滅裂である”ことを理解してもらうプロセスが必要です。その方法は、相手方の話をとりあえず全部聞いた上で反論することです。
交渉場面では、往々にして互いの主張の言い合いになることが少なくありません。感情的になって、言葉を被せるように話してしまっては、支離滅裂な相手を余計にややこしくさせてしまいます。
支離滅裂な相手には、丁寧に・ひとつずつ、支離滅裂であることに”気付いてもらう”ことです。
具体例を出してお話します。以前に、退去時の原状回復の内容について、貸主側と借主側とで決着がつかない事案がありました。なお、本件の弊社のクライアント様はテナント側です。
物件現地でオーナー・建物管理会社・テナント側で原状回復の箇所・項目について確認を行った上で、当方にて工事を行って、明け渡し行ったのですが、後からさらなる要求をされてしまったのです。
ひとつは、店舗用の袖看板です。当方クライアントは、袖看板を白無地のものに変更することを「管理会社に確認の上」行ったわけですが、明け渡し完了後(原状回復工事完了後)にオーナーが看板自体については、テナントが設置したものだから、看板ごと撤去せよと言うのです。
白無地に変更することを管理会社に確認取って、わざわざ高所作業車まで準備して施工したのに、後出しジャンケンで戻せという訳です。
管理会社の担当者は、オーナーに言われたから、とりあえずこちらへ要求しているようでしたが、相手(管理会社)は自らの責任で了承したことを忘れているかのようです。
一旦、相手の要求を聞くために、看板自体の撤去に応じることはやぶさかではないが、白無地に変更することに要した費用は、本来発生させる必要がなかった(看板自体を撤去するわけですから白戻しにする必要がない)ものであるから、負担を求めた所、オーナーはなぜテナントが設置した看板について撤去しなければならないのか? とおっしゃいます。
当方は、オーナーに負担してもらうつもりはなく、管理会社が「白戻しの了承」をして行った工事なので、その分を「管理会社」に要求したのです。
この時点でやっと管理会社は自らの過失(ミスリード)を理解したのです。これにたどり着くまでに、本論からずれる話をまぜこぜにしてややこしくしようとしてきましたが、この看板のことに関しては、シンプルに「確認して行った行為ですよね?」というだけです。
ふたつめは、エアコンの室外機についてです。本物件では、隣地とのすきまに室外機を置いていたわけですが、そこに置いたままにしておくことが、何か故障などが起きた時に(爆発する!?)心配だから、撤去してほしいと言います。
室外機爆発の心配をすること時点で、話を聞く余地もありませんでしたが、一旦要求は受け止めます。
その後、なぜその場所に置かれているのか? 経緯を知っている人に確認を取りました。最初は室外機は建物の屋上に置かれていたのに、オーナーの希望で下へおろした経緯であることがわかりました(テナント負担で)。
どうやら屋上へ行くには、最上階のオーナー宅を通らなければならず、メンテナンスのたびに在宅することを拒んだために行ったという経緯がわかりました。
設備に不具合があったときに、メンテナンスに応じるのは貸主の責務であるはずです。自身の都合を優先して、室外機の移動をテナントに求め、1円の負担もしなかったものを、今度は屋上に戻せ(もしくは撤去しろ)というのです。
経緯を確認したら甚だおかしな要求です。オーナーは、過去の経緯を忘れてしまったのでしょうか? テナント側は店舗スタッフが入れ替わることが多いので、過去の経緯を引き継ぎされていないものだと思ったのでしょうか?
このような経緯の中、テナント負担で処理するのは、不憫で仕方ありません。過去の経緯を整理して話し、ようやっと相手方の不当な要求を治めてもらうことになりました、まったくです。
妥協できる線をはっきりさせておく(準備)
交渉を繰り返しても、お互いの妥協点が交わらないことがあります。感情的になってしまっている場合です。理屈が通らず、とにかくこちらの譲歩を得られないと、気がすまないという場合です。
こういう場合は、決着のつかない後ろ向きの議論を続けるのは、非生産的ですから、多少の譲歩をしてでも先に進めることが賢いと言えるでしょう。
その判断をするためには、最低限譲れないラインを事前に腹に決めた上で(組織であれば責任者の了解を取った上で)、交渉に臨むことです。最低限守るラインと、多少譲歩してでも前に進めるべきラインとを決めておくことです。
多少の譲歩によって、大事な部分が守られるのであれば、交渉全体ではその選択は正解です。時間もコストですから、別の有益なことに時間を配分したほうが得です。
相手とのやり取りを記録に取る
最後に、支離滅裂な相手とは”履歴”を残す形でやり取りするのが絶対です。メールで行うのが、いいでしょう。
上の例でも、決め手になったのは、支離滅裂であるやり取りの履歴が、辻褄の合っていないことを証明してくれるからです。
なるべく相手にはしたくないですが、”正しさ”が通じない、支離滅裂パターンの相手にはこのようなやり方が有効だと思います。
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