一人マネジメント会社という体制について
私の会社は、代表の私と事務員のみの2人構成の法人です。業務の最適化を図りつつ、対外的に価値をアウトプットするのは私だけとなります。従業員を増やさないことについては、私なりの考えに基づいており、これについて今日は触れさせていただきたいと思います。
仕事とは、求められるすべての事柄に対して、早く確実な手段によって、質の高い役務を提供することに、他ならないと考えていますが、役務のクオリティを高く維持し続けられるかどうかは、企業の体制が影響するものではないかと思っています。
私自身、独立するまでは組織人として社会に機能する経験をして参りました。その上で、問題解決をアウトプットの主軸とする、弊社のような法人があるべき姿について収束させたのが、この1人従業員法人です。ここに至る経緯は様々ありますが、根底には大学在学中に教鞭を取っていただいた、恩師、北矢行男先生の指導が多分に影響しています。
以下、北矢先生が1990年に執筆された『ハードボイルドの経済学』TBSブリタニカ刊 の内容を引用させていただきながら、私の言葉でお話させてもらえたらと思います。
1人社長である第一の理由は、「即断即決できること」です。
言うまでもなく、業務遂行にしかり会社の重要決議事項であっても、自分単独で決めることができます。パートナーがいれば、すべてを自分一人で決めることはできず、了解を得てからでないと進めることができないでしょう。
すべての業務の窓口は私であるため、関係者全方位に対して、即断即決することができます。いわゆる稟議や根回しといった段階を経ることはなく、決定から実行までのスピードは、一人体制以上に上回ることは物理的に不可能でしょう。
また、商談の場面では、枝分かれするような問いであっても、即断即決の応酬によって、展開は止まることなく、最終点まで行きつけます。
「この点については、上司に確認してお返事します」ということが起こりえません。
もっとも逃げ道がない私の立場は、誤魔化すことができず、常に真剣勝負になりますが、これはビジネスパートナーにとってデメリットになるものではないはずです。
私はスピードがすべてとは思いませんが、当たり前のことを当たり前にやるという前提では、スピードは仕事の遂行能力の基本スペックであると思います。一人体制は、タイムリーな展開を約束できる環境であり、クライアントにとってプラス以外ないと考えます。
次に挙げられることは、納期を早められることです。
発注者にとって、納期が早まる弊害は基本的にないはずです。発注者の注文した時点が解決させたいボルテージが一番高く、納期・リアクションが早ければ早いほど満足が高いものでしょう。
従業員を抱えたとしたら、私は全員に生きがいを持って仕事に取り組んでほしいと思います。しかし、仕事を通じて一人前にさせるためには、じっくりと育てる姿勢が欠かせません。
私にとって、人との関わりを通じて、”人を育てる”ことは、仕事で”役務をクライアントに提供する”のと同じくらい人生冥利に尽きることですが、だからといって仕事のスピードを下げることは私の本望ではありません。
高い水準のアウトプットを、速やかな納期で納めることと、部下の能力アップのために配慮することは、トレード・オフの関係にあり、両方を求めることはできません。
D・カーネギーの名著『人を動かす』にあるように、人(部下)を動かすには、認めてあげて、そして待つことが必須です。また、山本五十六の名言にあるように、
「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。 話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。 やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。」
これこそ、人の成長のために必須であることは、私自身が社会人経験で学んだことです。
最後に挙げられる理由は、人を雇用しなくても必要な能力は、他のフリーランスやプロフェッショルからサービスを買うことで補うことが可能と考えるからです。
補うというより、むしろ価値提供を受けられるといった方が正しいです。案件毎に、そして得意分野ごとにそれぞれの専門家にアウトソースすれば、弊社はクオリティ高いサービスを受けられ、また弊社はクライアントに高い価値をアウトプットとして提供することが可能です。
さらに言えば、サービス提供者は、高度で新しいサービス提供者があれば入れ替えることも可能です。合理的なやり方だけがベストではありませんが、一定の緊張感を持たせることは、クオリティを下げないための必要条件かと思います。
しかし、一人でこなせる業務量には限界があり、キャパを超える仕事を請け負ってしまったら、クオリティを下げることになりかねません。したがって、当社は、クオリティを下げないための最適解として、従業員を持たない一人マネジメントの体制を取っています。