賃貸管理会社の業務について①募集業務編
不動産管理業務とは、いったいどんなことをしているのでしょうか?管理会社によって若干の差はあります。ここでは、オーナー様の期待が大きい部分にクローズアップしてご紹介したいと思います。
まずは募集業務ですね。空室を早く、かつ適正な相場で成約することです。次に、家賃管理業務です。入金管理して、督促して回収して、送金することこれは毎月行われることです。最後に、入居者対応業務です。これらに加えて、物件運営が円滑になるために行う日々の業務も大事な部分としてありますが、これもまた別な機会にまとめたいと思います。
今日はまず募集業務について、不動産管理会社がなにを行っているのか、当社の事例をもとにお話したいと思います。
目次
空室の前段階で大切なこと
募集業務は、空室になってから始まるものではありません。当社では、前の入居者さんが退去する時から募集活動がすでに始まっています。
それは、これまで住んでいた方に”気になる点”を聞くようにしています。聞くタイミングは、退去立会いのときです。先日、6年間住んだ方が退去するということで、立ち会いをしてきました。
まず理由をお尋ねします。この方の場合は、東北の実家に戻るということでした。致し方ないですね。他にも、マンション内で迷惑行為などがなかったか? とか、お部屋の中で困ったことなどをお聞きします。すると、キッチンの蛇口の位置が低くて、腰が痛かったという経験をお聞きすることができました。
そのキッチンの様子は次の画像です。
わかるでしょうか?次にアップの写真ですが、
確かに低いですね、言われないと気付くことができなかったかもしれません。これまで住んでこられたわけですから、管理会社よりもお部屋の特性については肌で感じてこられたと思うのです。はじめはあまり入居者の方もお話してくれません。実は退去立会いの時は、借主様の原状回復費用の負担について、こちらからの提示があるまで、緊張を抜けないので、最初から色々と話してくれるケースは少ない方です。
それでも、コミュニケーションを重ねていると、そう言えば……とお話してくださいます。これから修繕工事をするわけですから、このタイミングで不具合は解消して、使いやすくしたほうが入居付けにも絶対にいいですからね。
ということで、下記画像の水栓に変更することをオーナー様へ提案し、取り付けすることになりました。
空室になってからではなく、退去立会いのときから募集活動が始まっている、当社はそう考えるようにしています。
1 募集業務
賃料設定
家賃相場は大きく変わることはありません。しかし、賃貸物件は常に他の物件と比較されて決まる性質が強いため、空室になるたびに賃料設定することが大切です。
極端な場合は、近隣に競合物件が少ない場合は多少強気の設定することができますし、反対に同じような物件がだぶついている場合は、条件面でなにか輝くものが無い限り決まりが遅くなると言えます。
賃料設定は、レインズとsuumo賃貸経営を使って行います。
[補足] レインズとは、Real Estate Information Network System の略で、不動産業者が利用できる、物件情報の交換のためのウェブシステムのことです。仲介業者は、賃貸物件を探す時、売買物件を探す時はこのシステムにログインし、他業者が保有している物件情報を探すことができます。
まずはレインズで条件を設定して、現在の空室在庫状況を調べます。条件は、物件の、最寄り駅からの徒歩圏別に賃料坪単価を出します。具体的には、駅徒歩5分以内、10分以内、15分以内に分けます。
下の表は、東急大井町線のある駅から徒歩5分以内の、40㎡〜50㎡のマンションに絞って得られた在庫情報です。
徒歩5分以内の物件は、平均して坪単価11,002円であることがわかりました。次に、10分以内の物件はどうか? と調べます。
5分以上10分以内の物件は平均坪単価:10,575円であることがわかりました。弊社の募集物件は、徒歩12分の立地なのでこれに加えて徒歩15分圏内のデータを出して、比較検証します。
次に、suumo賃貸経営サポートを利用して、更に比較検証します。注意点は、レインズには載せずにポータルサイトにしか掲載していない情報が、suumoには載ってきますので、両面から見る必要があります。
suumo賃貸経営サポートでは、現在の在庫物件について、条件をしぼって検索することができます。例えば、○○駅徒歩10分以上の40〜50㎡のワンルーム・1LDKという風にしぼった中で、自社の募集物件とそれらの条件とを比較することができます。
こちらがその画面ですが、赤枠内を御覧ください。「登録物件」が募集中の自社の物件データで、「周辺物件(平均)」と比較して、これだと設定が安いな、ということがわかりますね。
このように、空室になった時点の、他の空室在庫状況を把握して、条件設定することがなにより重要です。
広告掲載(入居希望者向け)
広告掲載、つまり賃貸ポータルサイトへの掲載です。掲載するタイミングは、退去する1ヶ月前から行います。なぜなら、賃貸の解約は1ヶ月前予告のため、現入居者がお住まいになっている段階から、ポータルサイトの募集活動は開始します。
以前にその部屋の空室写真がクリーニング後のものがあれば、それを利用して(過去の撮影日を表示して)まず掲載します。次に、退去後されたあと、原状回復工事とハウスクリーニングが完了してから、天気のいい日とその部屋の方角に合った撮影時間で撮影をします。
室内撮影のポイントについては、以前の書いた記事がありますので、こちら『[物件写真の撮影] 一番効果的に写る時間帯・アングルで撮る そして印象に残る1枚も加え』を御覧ください。
募集図面の作成・レインズ掲載(業者向け)
募集条件が決まったら、仲介業者向けのチラシ(募集図面といいます)を作成して、レインズへ掲載し、すべての業者さんへ物件情報を公開して、客付けしてもらう体制を整えます。
募集図面作成のポイントは、①きれいな写真を厳選して載せること ②ほかの室内写真をすぐ確認できるようにsuumoなどポータルサイトのウェブリンク(QRコードなど)をつけておくこと ③広告料の設定 です。
下の図面に上のポイント部分をを図示します。
図面自体が見やすいことは当然大事なことですが、一番オススメできるインパクトのある写真を数点載せること、もっと見たい人(営業マンはいい物件を見つけて見込み客を早く成約したい)用に、手軽に物件のことがわかるように、QRコードでsuumoなどへのリンクを貼ります。営業さんはこのQRコードをスマホでかざすだけで、室内状況を把握できるため、物件収集する時間の短縮につながるのです。
そして、もっとも大切なのは客付け業者へのインセンティブです。俗に広告料と言いますが、成約してくれば場合のお礼の報酬になります。インセンティブの設定は、客付け業者さんが、当社の物件を優先的に紹介してくれるための重要な要素となります。インセンティブの方法はこれだけではなく、もっと効く方法がありますが、ここでは説明を割愛します。
近隣業者への告知
募集図面が完成したら、物件に近い賃貸を専門にしている客付け業者さんへfaxで募集図面を送信します。また、状況によっては、業者へ訪問して紹介をお願いすることもあります。
尻すぼみになりましたが、とにもかくにも賃料設定が重要です。中古物件であるばらば、賃料設定の基本は相場を的確に捉えることです。ちょっとでも高いと感じさせてしまってはダメでしょう。
現代の消費者傾向は、全般的に「楽して得する」方向に流れると言われています。高いとは決して思わせない絶妙な賃料設定、良さをPRする写真、そして期待を裏切らない室内環境の整備、が重要だと思います。
弊社は、プロパティ・マネジメントに徹した管理会社です。協力(仲介)業者とのパートナーシップ構築、入居者からのクレーム対応迅速化により、高稼働・解約防止のためのマネジメントを行います。