PM会社のリーシング力は[入居日数÷365日]で計算された”入居率”が最もシンプルな指標
先日、現役のPM会社のマネージャーと話していて、PM受託物件の稼働率について話が盛り上がった。そこで、改めて稼働状況を示す指標について深堀りしたいと思う。
(参考)2019.12.10 up 記事『賃貸物件の経営指標は、入居率が正解?それとも稼働率平均??』
目次
稼働率=[収納賃料÷満室合計賃料]
”92.1%”これは2019年、弊社のPM受託全物件の稼働率の数値です。この数値は[収納賃料÷満室合計賃料]の計算結果であり、1年間の実数値をもとにしている。収入実績なので日割賃料も反映している。
上の一覧は、目黒区内の14世帯の賃貸マンションの年間賃料実績と満室想定を一覧にした表だ。1年の実績賃料(11,589,057円)は、満室時の想定賃料(11,978,000円)に対して、96.8%だったことがわかる。表中の黄色部分は、空室もしくは日割賃料を示している。
入居率=[入居日数÷365日]
一方、賃料でなく”入居日数”を要素として計算すると、稼働率に似て非なる”入居率”が導き出される。
上の一覧は、入居日数を部屋ごとに集計したものだ。1年間退去がない部屋は365日入居したことになり、途中退去があった部屋は日割り日数を考慮して年間何日埋まっていたかを示している。
稼働率と入居率は数値が異なる
”入居率”は96.7%となり、一方、賃料ベースの”稼働率”は96.8%であった。この結果の違いは、各部屋の賃料が違うことによる。そのマンションの平均賃料と比べて、賃料の高い部屋の空室が長ければ、入居率より稼働率の数値が低くなる。
どちらの数値が正しいのか?
できれば両方の数値を算出するのが望ましいと考える。同じマンションで稼働率と入居率を比較しても、それほど数値に差は出ない。しかし、他のマンションと比較するときに違いが生じる。1棟のマンションではなく、複数棟(受託している全物件)で比較するときだ。
賃料の高低に影響しないのが”入居率”
賃料10万円の物件Aと20万円の物件Bが空室になる場合、”入居率”の影響はどちらも同じ1件(空室日数)だが、”稼働率”の場合はAよりBの空室の方が2倍影響する。Aの2ヶ月空室とBの1ヶ月の空室は同じ20万円の損失になるからだ。
弊社の管理受託物件の賃料価格帯は、下は月額6万円台から上は30万円後半までと幅がある。6万円台の物件の空室は稼働率のインパクトは低い、反対に高額になると稼働率へのインパクトが高い(賃料が高い物件は、早くに空室を埋めないと稼働率が低くなる)。
一方、入居率は賃料による差がないため、受託している部屋を均一に入居できているかを見極められる指標と言える。PM会社として複数物件の客付け力(リーシングマネジメント力)を図るには、入居率の方がシンプルではないかと思う。
2019年1年間の弊社管理受託物件の”稼働率”は92.1%であり、”入居率”は93.7%であった。この差は繰り返しになるが、高価格帯賃料の空室期間が長く、低価格帯の物件は早めに決められたことを指している。
また、計算方法は物件ごとの入居率を平均するのではなく、全受託物件の入居日数を合計して計算する方がより正しい数値が得られる。
各物件の入居率を平均するのは”いいとこ取り”の数値
具体的には[全部屋の入居日数合計÷全物件の部屋数×365日]という計算式になる。10世帯マンション(A)12世帯マンション(B)と分譲賃貸マンション1室のみのCとDをあわせた”入居率”は95.8%となる(下図参照)。
物件 | 世帯数 | 満室日数 | 空室日数 | 入居日数 | 入居率 |
A | 10 | 3,650 | 100 | 3,550 | 97.2% |
B | 12 | 4,380 | 260 | 4,120 | 94.0% |
C(分賃) | 1 | 365 | 0 | 365 | 100% |
D(分賃) | 1 | 365 | 0 | 365 | 100% |
合計 | – | 8,760 | 360 | 8,400 | 95.8% |
ここで注意しなければならないのは、各物件の入居率の平均値[(97.2+94.0+100+100)÷4]を算出すると97.8%となり、数値がよくなってしまうことだ。それは、4物件のうちの2物件が100%稼働でありその数値に引っ張られるからだ。
通常単身世帯の入居期間は平均3〜5年と言われ、ファミリータイプでは少し期間が長くなる。一度入居した分譲賃貸物件は3〜5年間100%稼働の状態が続くので、これを平均値として採用してはいささかいいとこ取りの数値となってしまう。
よって、弊社では管理会社の客付け力(リーシングマネジメント力)を示す指標は”入居率”を採用するのが望ましいと考える。
(補足)稼働率(稼働賃料)は、クライアント別に分けて利用するのが望ましい。稼働賃料に加えて、もっと細かくパフォーマンス(遂行能力)を示すには、当該物件の収入(更新料・礼金)と支出(貸主負担の広告料・原状回復費用)まで計算して昨対で比較していくことが大切だ。