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2020-05-18

不動産価格はなぜ上がる? 価格上昇と金融政策の関係性は?


たじつ
たじつ

こんにちは。不動産の顧問業をしております、宅建士の田実です。

特定警戒都道府県を除いて、緊急事態宣言は解除されましたが、この先第二波がくるのか来ないのかは誰も予測がつかない状況ですね。

不動産業に身を置くものとしては、2012年頃以降上がり続けていた日本の不動産価格が今後どう推移していくのか、気になって仕方ありません。

東京のマンション価格は、この7年ほどで4割も価格上昇しました。これを”バブル”と呼ぶのかどうかはここではどうでもいいとして、なぜここまでに上がったのか? 一方、戸建ては1割も上がっていないのです。

日経平均と不動産価格は相関関係がありますので、日経平均が上がるにつれて少し遅れて不動産価格が上昇したことは事実としてあるのですが、それだけでは根拠に不足しております。

私は2002年から社会人となり、不動産業界一筋な訳ですが、これまでに”バブル”のような価格上昇トレンドを2度経験しました。わずか18年の間に、2度の上昇局面を経験することはあまりないことだと思いますが、現場の最前線の実感では、不動産価格は「金融政策」と密接に関係していることだと言うことです。

リノベる。のリフォーム一体型ローン

コロナショックが来る前の東京の不動産価格は、右肩上がりでしたが、主に中古マンション価格の上昇が著しかったことは先述しました。これは「リフォーム一体型ローン」が誕生したことが大きな要因だと思っています。

中古マンションは、リフォーム一体型ローンがある前は「リフォーム」する程度の需要にしか答えられない金融商品でありました。リフォームローンとは、期間が短く、金利が高い商品でした。すなわち、高額のリフォームローンでは、毎月の返済金額が重たすぎるため、ほとんど利用されないローンであったのです。

そんな中、国の施策はこれまでの「新築至上主義」から「ストック(=中古)も生かしていく」路線へとシフトするようになりました(まだまだ新築至上な面が多分にありますが。

そんな背景に台頭してきたのが、「リノベーション」という概念です。リノベーションとは、本来”用途変更”をして、不動産を蘇らせるという意味合いでしたが、広い意味では、スケルトンにして大改装することを今ではリノベーションと呼ぶようになりました。

リノベーションには大掛かりな修繕費用が必要ですが、”リノベる”という会社がリフォーム一体型ローンなるものを金融機関に教育し、物件価格と同じ35年間のローン返済を可能となり、リノベーションの大ブームが起こりました。

築古のマンションは、それまでは不動産業者が購入して、大規模リフォームして、完成した住戸を利益を乗せて再度市場に戻ってくるというサイクルだけでなく、エンドユーザーを出口として、取引されるようになったため、一気に築古マンションの取引が加速したわけです。

これは、”リフォーム一体型ローン”という金融商品(≒政策)が、不動産流通の活発化を招き、相場上昇につながったということが言えると思います。

相場上昇には一体型ローンだけでなく、オリンピック景気への期待感など景気ムードや価格上昇も関係しているでしょう。しかし、多分に影響を与えていると思えるものは、このような流通を直接後押しするローン商品やそして低金利などの、間接的な材料でしょう。

金融緩和とマンション投資家

不動産(マンション)投資が、地主さんが農業傍ら行う兼業営業ではなく、個人の方(高属性サラリーマンなど)が事業として行う不動産経営として、広く浸透しました。

背景として、黒田バズーカによる大胆な財政政策で、金融機関は融資しやすい環境が第二次安倍政権発足後しばらく続きました。株価は上がっている、しかし給料が増えているというわけでもない、国民が豊かになってきているという実感もない。

企業融資先で優良である先は、限られており一方で不動産事業は”担保”が取れるので、返済不能になった場合でも、代位弁済を受けられる可能性が高い。もっともマンション経営は、ある程度購入金額が適正であり、賃貸住宅需要のある物件を購入すればデフォルトリスクは極めて低い。そろばんもはじきやすい。

そんな背景から、不動産事業への融資がどこの銀行からもジャブジャブ出るような状況でした。ある信用金庫では、中古物件であっても”経済耐用年数”といって、法定償却年数を無視したウルトラcの融資も実行されていました。

これも金融機関(≒施策)が間接的に招いた、不動産投資ブームであったと言えます。2008年のリーマンショックの前はいわゆるファンドバブルが弾けたという言い方もできます。ファンド=証券化(J-REIT)は、エンドユーザーではなく、プロプレイヤーの取引を活性化することになりました。J-REITは、記憶が正しければ、白川日銀総裁のころから日銀の財政政策のひとつに加えられるようになり(それまでは、J-REITはリスクが高いので、日銀は購入しなかった)、太鼓判を押されるような格好になり、加熱していった背景があると思います。

つまり、いつの時代も不動産価格の上昇には、かならず裏に金融緩和なるものが働いた結果だということが言えます。

コロナショックで再び金融緩和開始

ところで、コロナショックにより日本のみならず世界中大打撃を受けていますが、国内においては、スルガ事件で一旦は不動産融資を控える方針であったのが、再度不動産への融資への緩和が始まってきています。

取引が停滞さえしなければ、不動産価格の大幅下落は考えられにくいので、金融機関が不動産への融資を止めない状態が続けばこのコロナショックを切り抜けられるのではないかと思います。


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