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2020-04-28

マンション経営なら ”デザイナーズ物件”より”普通”のマンションを保有するのが正解


たじつ
たじつ

こんにちは。不動産の顧問業をしております、宅建士の田実です。

マンション経営はミドルリスク・ミドルリターンと言われています。その理由のひとつは、需要が安定していることです。賃貸マンションの需要は、借り手のことを指しますが、住宅は生活の基盤ですから、生活の中でなくてはならないものです。

仮に、給料が減り節約を迫られたとしても、節約の対象にはなりません。もっとも高い物件から安い家賃の物件へ引っ越すということはあるかもしれませんが、別の方を見つければいいだけの話です。

とは言え、住宅在庫はすでに充足しており、全国で約820万世帯(うち賃貸用物件の空き世帯は約430万世帯)の空室があると言われていますので、家余りの中賃貸マンション経営はリスクがあるという意見もあります。

当然の意見であり、私の考えも総論としては賛成です。需要のない所で相場で買ってしまえば、それはハイリスクです。需要のある所で相場で購入するか、需要が低くてもリスクを間引きした安い値段で購入しなければマンション経営は最初から失敗することが見に見えています。

前置きが長くなりましたが、賃貸マンション経営は競合が多いですから、「差別化」が重要だ、他の物件に勝たなくてはならない、という声や提案をまれに見かけます。

「差別化」することに反論はありませんが、いわゆるデザイナーズ賃貸で賃料を高めにする戦略や高級物件を取得するという戦略のような、物件スペックで差別化を図るのは正しいとは言えません。

マンション経営の目標は、利回りを上げることです。利回りを向上させるには、取得費(投下資金)を少なくして、リターンを上げることです。

利回り=物件価格(投下資金)÷賃料収入

まず、リーシング(入居付け)の観点から”デザイナーズ物件”は、オーナーが思っているほど、入居者からの引き合いが強くないことです。

はっきりとした統計は取れていませんが、デザイナーズ物件に住む人とは、ライフスタイルに拘わりを持っている人や”おしゃれ思考”の方々です。日本全国の人々を、おしゃれに興味がある人と関心がない人を分けると、おそらくおしゃれに関心のある方は大目に見ても3割程度かと思います。

おしゃれのある方を狙ったがゆえに、対象が狭くなってしまっては「差別化」の意味がありません。

現場で20年弱在籍していると、デザイナーズ物件を好む入居希望者は”普通”の賃貸物件を求める方に比べて、圧倒的にボリュームが少ないことを知っています。

”住宅”はあくまで生活の器でありますから、奇をてらう必要はないというのが、私の実感です。

しかし、この意見には例外があります。賃料設定を相場と同等で設定することができれば、それは「差別化」になります。

よくありがちな考えは、物件スペックをハイグレードにしたから、家賃も高く募集できるという幻想です。賃貸住宅は、よほど突出したレベルのスペックやロケーションで無い限り、相場より高く募集することは、空室期間を長くするだけで、年間のトータル利回りは下がります。

よほどのことというのは、例えば住宅の目の前は『何も遮るものがないオーシャンビューで、鉄道駅まで徒歩3分でアクセスできて新築』みたいな物件のことです。ほぼ皆無ですよね……。

とびっきりおしゃれの物件を、おしゃれな人をターゲットに向けて募集するより、必要十分なスペックを大衆向けに相場で募集する方が、年間トータル収支は向上します。

話は戻りますが、物件の利回りは「投下資金(=物件価格)」と「収入」で決まります。

デザイナーズ物件にして、安く仕上がることはありません。ハイスペックな設備や仕上材(住宅内・外観)は、大量生産品でなく割高です。建築費(リノベーション費用)が、普通の賃貸物件より高くなってしまえば、投資の初期段階(=物件仕入れ)から、高利回りを望めないことが決まってしまいます。

繰り返しますが、高い建築費(リノベーション費用)を掛けて、高い家賃で決まればいいじゃないか、という反論が聞こえてきそうですが、ハイスペック物件が相場より高い賃料で決まるのは新築のときと築後3年以内の時でしょう。

ハイスペックであっても設備は日を重ねる事に黄ばみなどの劣化が進み、見栄えが劣るようになります。不思議ですが相応の物件設備であれば、古くなっても見栄えは馴染んでいますが、ハイスペックの場合は数年後の価値減少が早く感じるものです。

また、ハイスペック路線の物件は、次々に供給される周辺のハイスペック新築物件と比較され続けることになります。家賃を相場に近づけたら決まるということだとしたら、はじめからハイスペックにした意味がありません。

ご参考にしていただけたら幸いです。

※不動産の意思決定は、100人(物件)には100通りの解決策があるものです。上でお話したのは、あくまで一般論でありすべてのケースに当てはまるものではないことをご了承ください。デザイナーズ物件が正解なケースはもちろんあります。


弊社は、プロパティ・マネジメントに徹した管理会社です。協力(仲介)業者とのパートナーシップ構築、入居者からのクレーム対応迅速化により、高稼働・解約防止のためのマネジメントを行います。



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