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2020-02-26

店舗・事務所の対賃料増額交渉②


オーナーからの賃料増額交渉事案です。定期賃貸借契約(期間2年間)で結ばれた商業モールの店舗でのことです。

クライアント先の法人様は、本件対象物件を1年前に居抜きの状態で引き受けたものでした。同業態の別法人が運営していたものの、諸々の事情により運営権を同社に引き継ぐことになり、同時に賃貸借契約も継承していた、という状況でした。

商業物件の賃料は景気により上下するケースが多いです。特に貸主側が不動産会社のようなプロオーナーの場合は、定期賃貸借契約で結んでいることが多く、更新(再契約)や一定期間毎に賃料の見直しをすることが多いです。

今回の事案も経済的背景を理由に、賃料の増額を要求されました。賃料増額に対しては、いくらかの視点で検証することが肝要です。

外的要因から検証する

まず、外的要因です。ここでの外的要因とは、オフィス・店舗賃料が総じて上がっているもしくは下がっているという社会背景によるものです。

オフィス環境の現在のトレンドは、働き方改革による業務の効率化(残業減らす動き)や、働きやすさを求めたオフィス環境の整備(休憩スペースや託児所設置などの増床ニーズ)などの背景で、商業不動産(オフィス・店舗)全体の空室率が下がっています。

空室率が下がれば、賃料相場は総じて上がりますので、オフィス・店舗物件の外的要因としては、賃料アップトレンドであることが言えます。

したがって、本件事案のように、オーナーから増額を求められるのは否めない部分があります。また、こちらの物件では、本商業モールへの来場者数が定点カメラにより集計されており、増加傾向であるデータも示されていました。

内的要因から検証する

次に、検討すべきは内的要因です。これは、借主側の経済状況と言い換えられます。賃貸借契約は2年前に、以前の法人が再契約しており、1年前に借主の地位をクライアント先が承継していました。

従前の居抜き店舗を引き継いで、軌道に乗らせるべく努力している最中です。もっとも、前借主法人が当社に引き継いだのは理由があります。その場所で業績がとても良ければ、引き渡す必要はなかったはずです。

仮に、クライアント先法人が引受けをしなかったとすると、その時点で賃貸借契約は解除されていたかもしれません。貸主からすると、賃料収入がなくなることになります。すぐに次の借主が見つかったかもしれませんが、それでも2ヶ月ほどのアイドルタイム(原状回復工事その他準備期間)が生じます。

クライアント先の努力により、その店舗での業績を上げるべく鋭意努力している最中ですので、1年経過してすぐに賃料を上げられてしまうのはフェアではないと言えます。

内部要因の次の検討要因は、その拠点の位置付けについてです。複数箇所店舗展開している中で、その物件での営業優先度をどの程度重要と位置づけているかについて考えます。

無くなった場合のインパクトが大きいのであれば、そのまま受け入れるということも必要でしょう。インパクトが小さければ、強気に臨むのもよいでしょう。

オーナーとの関係性

最後に検討すべきは、オーナーとの関係性です。貸主がプロオーナーである場合、その物件だけでなく他の施設も賃貸していることがあります。オーナーからすると、賃料増額に対して受け入れが渋いテナントより、容易に上げてくれるテナントを優先するのは致し方ないことです。

他の施設との兼ね合い、オーナーとのこれまでの駆け引きの押し引きを考慮して、本件の対応を考える必要があります。

まとめ

①外的要因(賃料アップトレンドであること)②内的要因(賃貸契約を継承していることでオーナーは助かっていること、あるいは、引き継いで1年しか経過していなく、軌道に乗らせている最中であること③オーナーとの関係性(ビジネス上の駆け引き)を要点にして、総合的に判断するのが必要です。

結果的には、増額に応じましたが、初回提示より増額率を半分にして着地させた、という事例でした。

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