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2020-02-23

テナント探し代行事業に辿り着くまでの失敗談


私は、2015年の3月、独立するため13年勤めた会社を退職しました。しばらく事業プランを練り、およそ半年後に、湘南エリアへ移住したい方に特化した不動産業者として会社を興しました。

湘南地域というと、あこがれを持つ人は多いですが、あこがれだけで移住するのは容易ではないと思います。私はそのころ湘南の辻堂エリアに住んでいました。辻堂に引っ越すまでは東京都杉並区に住んでいました。海に歩いて行けて、かつ都内(東京駅界隈)まで電車通勤できる街を探したところ、湘南以外には選択肢がなかったからです。

果たして1時間以上もの通勤時間をかけて、生活が成立するのか? 仕事をすることができるのか? という不安を振り切り、都内から湘南地区へ移住する決断をしました。それからというもの湘南、特に辻堂の地域に惚れ込んでしまい、私が経験した不安を、同じ気持ちで解消してくれる不動産業者がいたらいいな、そんな思いを胸に、辻堂専門、他地域から辻堂に移住したい人向けに、と志したわけです。

辻堂の街情報や店情報、朝の通勤事情をブログでアップし、住まいだけでなくライフスタイルの全体感を提案できる不動産パートナー、そう夢を描いていました。

通勤事情をまとめた記事には一定の閲覧数があり、その記事から実際に物件を探してほしいという問い合わせが、来るようになりました。せっかくきたお問い合わせに、いい物件を探して辻堂移住のお手伝いをしたい!と意気込んだものの、探してもいい物件はひとつも見つかりませんでした。せっかくきた問い合わせもこれでは成約できない……。

優良物件は表に出ることが少ないです。優良物件を仕入れた不動産業者は、他の業者に公開せずに、まず自社の見込み客で成約することを考えます。なぜなら、そうすれば物件の提供元(売主・貸主)から手数料をいただく上に、物件を求める側(買主・借主)からも手数料が稼げ、報酬が倍になるからです。

特に、5年前の辻堂地区は、他地域からの流入が伸びていました。つまり需要過多の状況であったと言えます。需要過多の市場で、当時の私のような流通物件を扱う不動産業者が、いい物件を見つけて買主(借主)とマッチングさせることは無理がありました。物件を見つけてほしいと依頼があっても決めることができません。わたしは創業開始からつまづいてしまいました。

”優良物件を持つのは、物元(売主側・貸主側仲介)業者のみ” この不動産業界では当たり前の ”定石” を忘れて、事業計画を組み立ててしまったのです。思い起こせば、過去にもクライアントの要望に対して、仲介業者では最善の答えが導けないことを何度も痛感していたはずなのに……。

ちょうどその頃に、長年親しくしていたインテリアデザイナーさんを介して、企業の社長様を紹介していただきました。社長からは自社の商品を展示するショールームになる物件を探しているという相談でした。

社長の求める物件は、地下鉄駅の直結ビルもしくは徒歩1分以内の立地であること、そして賃料の上限は決して十分だとは言えない額でした。展示する商品は法人向け商品でしたので、オフィス街であることも外せません。

駅直結ビルというだけで、物件はかなり絞られてしまいます。また、社長の希望イメージでは、1棟のビルで、上層階がオフィスエリア、低層階部分が商業エリアと分けられている低層階がイメージ、ということでした。

相談の冒頭から、容易にはいかない物件オーダーだと感じていました。まず、駅至近であればあるほど、利便性・往来する通行人が多く、商業用途に限らず何にするにも価値が高く、つまり空き物件を見つけることが困難であること。

いい立地で賃料が抑えられかつ店舗利用が可能の物件とは、言い方を変えれば ”誰もが欲しがる物件” です。辻堂の物件探しと似ている……。

私自身、業界の仕組みは理解しているので、どの業者に頼めばこのような物件を持っているかはある程度想定できました。しかし、仲介業者としてコンタクトしてもいい情報は隠されるだけ……。

前々から思っていたことをシンプルに社長にぶつけてみました。

「仲介業者として物件を探してもいい物件は入ってきません。社長の会社の店舗開発部担当者として、行動させてください。そうすればショールームは見つけられると思います。ただ、手数料は通常より倍かかります。仲介業者に払う分と弊社に払っていただく分がありますので」

私は、物件が流通する仕組みについて端的に話しました。いい情報を得るには物元業者にアクセスしなければならないこと、物件種別やエリアによって相談する業者は異なることなど説明しました。

社長からはその場でOKの返事をいただきました。まずはやってみて、と。当然、物件を見つけるのはこれからなので、本当に見つかるかどうかはわかりませんでした。しかし、この方法と取れば、業界の情報流通の仕組みに影響を受けず、ニュートラルな状態で物件探しをすることが可能です。これならば見つけられるはずです。

こうして事業化したのが、弊社のテナント探し代行サービスです。

ひとつの不動産取引が成立するときは、通常、【物件オーナー>不動産業者>物件希望者】という風に、オーナーと希望者の間には不動産業者が介在します。オーナーから募集を委託された不動産業者は、自社の見込み客にマッチングできる希望者がいなければ、レインズというシステムに登録して、他社の不動産業者を通じて希望者に物件情報が届くようにします。

オーナーから委託された不動産業者のことを、物元(ブツモト)業者と言いますが、委託された物件が優良な物件であれば、レインズには登録せずに自社の保有客で取引を完結させることを考えます。なぜかと言うと、手数料が貸主と借主の双方から手数料を受け取ることができるからです。

情報を持つものが不動産仲介の市場を制するといっても過言でないくらいに優良物件の仕入れは重要です。裏を返せば、物件希望者は、情報を持っていない業者にいくら依頼してもいい物件は出てこないとも言えます。

店舗を必要とする事業は、店舗探しのタイミングと精度、スピードのいかんによって事業の展開が変わると思います。店舗探し開始から営業開始までのスパンを縮め、事業を加速させるためのお手伝いが、テナント探し代行サービスです。

このような経緯から生まれたテナント探し代行事業は、初めてご依頼いただいたショールーム案件で、依頼されてから1年以上を要しましたが、お陰様で無事にお引渡しとなりました。

今から2年前に1号案件が成約となりましたが、現在はこのショールームの2拠点目の物件探しをご依頼いただき、目下進行中となっています。クライアント様の事業が軌道に乗り、更なる拡大への一役になれたことは、仕事冥利につきることです。

弊社独自、テナント探し代行事例1号案件『パレスサイドビル


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